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昨日切られた腕の傷だけじゃなくて
背中やお腹や肩にいくつもの傷があったから
今まで見たことのないような傷の跡たちに思わず手が止まって
声が出なかった
「…怖い?」
『怖いっていうよりかは』
「なに?」
『痛かったんじゃないかなぁって…。たくさんある傷たちと一緒に
テヒョンさんの心も傷ついてるんじゃないかって』
「…ふふ、そんなこと言われたの初めて。」
『そうですか』
「痛くなかったは嘘だよね。これだけ怪我してれば。
でも命あるだけマシかなぁって思ってるんだ。これは本気で」
低く
少し悲しさを含んだ音で話す
その音がとても心地いい
『拭きますよ』
「お願いしまーす」
傷跡に触れる度、なぜか私の心が痛くなった。
『もう、痛くないんですか』
「んー?まぁ、かなり前の傷もあるしね」
傷跡を優しくタオルで触れる度
【この傷は5年前、ナイフでガッやられちゃったやつ】
【これはねぇ…3年前!車で当たられたときにフロントガラスが割れて刺さってさぁ〜】
【あ、そうそう。この傷は熱した鉄パイプあてられたんだよ。何気に一番痛かったかも〜】
と思い出を語るレベルのテンションで言ってくるもんだからだんだん
頭が混乱してきた。
「あ…」
左の脇腹に触れたとき、さっきまでとは違う反応があった。
また怪我の経緯を話すのかとと少し身構えたものの…特になにもなかった。
不思議に思って、なんとなく話しかけてしまった。
『…ここの傷の話はしないんですね』
「う〜ん、これはねぇ。楽しくないからさ。言おうか悩んでる」
『今までのも私は別に楽しく聞いてませんけど』
「それもそっか!ここはねぇ…
母さんを守った時にできた傷。
兄貴がつけた傷だよ」
音が止まって
手が止まって
聞えるのは私の少し早く脈打つ心臓の音
「…ね、楽しくなかったでしょ」
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作者名:りー | 作成日時:2023年10月24日 11時